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神話と有史の境目くらいの時代から続く、古い祭り

葵祭の牛車

▲葵祭の牛車

葵祭は、若葉が香る初夏の京都で最大の祭りです。王朝風の装束に身を包んだ人々が京都御所を出発し、下鴨神社を経て、爽やかな風が吹く賀茂川の堤をゆっくりと北へ向かい、上賀茂神社まで歩きます。

葵祭の起源は、平安時代よりずっと前の時代、京都市内を流れる賀茂川流域に勢力を広げた古代の豪族、賀茂氏の祭りでした。

賀茂氏の祖・賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)は、神武天皇が東征を行ったとき、大和国への先導役を務めたとされるほど、古い時代の人物です。

賀茂建角身命は賀茂川をさかのぼって一帯に領地を広げ、雷の神を五穀豊穣をもたらす氏神としてまつりました。そして、欽明(きんめい)天皇の時代(540〜571)、水害が起きたときに神の怒りを解くため、馬に鈴をつけて音を鳴らしながら走らせました。おそらくはガチャガチャと雷に似た激しい音を立てるよう、木や乾燥した藤蔓の皮などでつくられていたと思われます。

この祭儀は平安京遷都後の807(大同2)年に天皇の勅祭とされ、810(弘仁元)年に神への供物を上賀茂・下鴨の両社に奉納する行列が組まれるようになりました。現代の葵祭の行列が、京都御所から始まるのは、そのためです。

祭りの行列は、室町時代末期の応仁の乱のあと、200年近く途絶えましたが、江戸時代前期の1694(元禄7)年に復活。王朝時代の装束を再現した行列が組まれ、上賀茂神社と下鴨神社の神紋である双葉葵にちなんで、葵祭と呼ばれるようになりました。

双葉葵

▲双葉葵 葵は昔、「あふひ」と記されました。「ひ」には日、あるいは霊(たましい)という意味があります。
また、「逢う日」とも書けることから、大切な人と会う日とも重ねられます。奇しくも、西洋のハートと同じ形をしています。
葵祭では約1万4000本必要とされ、京都北部の山間地の水辺などで採集されています。

「行列」以外にも、魅力あふれる儀式が目白押し!

一般に「葵祭」というと5月15日の行列を指しますが、実は5月の前半に上賀茂神社と下鴨神社でさまざまな神事が行われます。

葵祭の祭儀日程の全体は、次のようになっています。

◎5月1日 上賀茂神社の競馬足汰(くらべうまあしぞろえ)式
◎5月3日 下鴨神社の流鏑馬(やぶさめ)神事
◎5月5日 上賀茂神社の競馬会神事
◎5月5日 下鴨神社の歩射(ぶしゃ)神事
◎5月上旬吉日 斎王代の御禊
◎5月12日 下鴨神社の御蔭(みかげ)祭
◎5月12日 上賀茂神社の御阿礼(みあれ)祭
◎5月15日 葵祭・路頭の儀
◎5月15日 葵祭・社頭の儀

くわしくは葵祭のさまざまな儀式をお読みください。流鏑馬神事や歩射神事の勇壮さ。御蔭祭の神秘。とくに新緑の水辺で行われる斎王代の御禊の輝くような美しさと言ったら!
そんな京都ファンやカメラ好きの方にとって垂涎の行事が、ずらりと並んでいます。

葵祭は、神話時代と有史時代の境目くらいの時代から続く、日本で最も古い祭りのひとつです。まさに神代から受け継がれた、日本人の精神史の源流であり、長い歴史を誇る葵祭を見ることは、現代の日本人にとって、自分のルーツを確かめる絶好の機会となるでしょう。

日本人が根を失って精神漂流している今だからこそ、葵祭のようなお祭りに接することは大切なのです。

古くて新しい祭り「葵祭」を、ぜひ見に行きましょう!

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