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五穀豊穣の神、稲荷

正月の伏見稲荷大社

▲正月の伏見稲荷大社

伏見稲荷大社は、全国の稲荷社の総本山です。歴史は古く、伝承によれば、711(和銅4)年2月初午(はつうま)の日、稲荷山三ケ峯に稲荷神が鎮座したのに始まる、とされています。
現在でも2月の最初の午の日は、初午(はつうま)大祭として祝われ、前日の巳の日から、多くの参拝客でにぎわいます。

「稲荷」は、その字から推し量ることができるように、もともとは五穀豊穣を司る農耕神でした。「稲成」あるいは「稲生」とも書きます。しかし、農作物は命を支えることから、江戸時代中期、商業が発達してくるとともに意味が広がり、商売繁盛や厄除けの神ともなりました。とくに出世には顕著なご利益があり、芸事の上達にも霊験あらたかとされています。

伏見稲荷大社の特徴は、何と言っても、稲荷山の麓から山頂へ続く、朱色の鳥居です。これは信者によって奉納されたもので、「千本鳥居」と呼ばれています。比較的新しいものもあれば、古いものもあります。小さな鳥居や石碑や小祠が集まった「お塚」も随所に設けられています。これは稲荷の神々に仕え、稲荷神と一般信者の仲立ちをする「おダイさん」と呼ばれる霊能者や、信者によって建てられたものです。

伏見稲荷大社には宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)・佐田彦大神 (さたひこのおおかみ)・大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)の3神、および関係の深い土着神と思われる田中大神(たなかのおおかみ)・四大神 (しのおおかみ)の2神をはじめ、実に1000体近い神々が宿っていると言われます。おダイさんはお塚を媒体として、これらの神霊と話をして、人々に取り次ぎます。

眷属の狐を伴って

伏見稲荷大社の境内のあちこちには、狐の像が置かれています。狐は稲荷神の眷属で、神の使いであるとされています。
これは、稲が実るころ、山の神が狐を先駆けとして下りてきて、農作業を見守るという考えに基づくようです。昔の人々は、キツネに霊的なものを感じていたので、山に食べ物が少なくなって人里に姿を見せるようになった狐に、「神様に守ってほしい」という思いをこめたものと思われます。

狐のほかに巳の神、つまり蛇の神霊も宿っているそうです。巳の神は「みーさん」とも呼ばれ、地霊として井戸になる水脈探しなどを得意とするほか、金運をもたらすとされています。稲荷神とは、ありとあらゆる自然霊の集合体であると言えそうです。
また、滝行の場には、不動明王など仏教系の神霊もまつられています。

狐の像

▲狐の像

余談ですが、「お稲荷さん」と言えば稲荷寿司を指すこともありますが、稲荷寿司の伝統は意外と新しく、江戸後期の天保年間に名古屋でつくられ、江戸などに広まったもののようです。

稲荷神社の数は、全国に3万社〜4万社です。ハ幡神社に次いで2位ですが、街角の小祠や家庭や会社の神棚などにまつられているものを合わせれば数百万になり、断トツで1位となります。
稲荷神は八百万の神々の中で、最も広く信仰されてきた神です。実際、伏見稲荷だけでも、参道入り口の大鳥居に始まり、背後にそびえる楼門や拝殿や本殿、さらには摂社や末社……と数多くまつられ、境内に足を踏み入れただけで、朱一色の世界に圧倒されます。
古来、赤や朱色には魔除けの働きがあるとされてきました。伏見稲荷大社では「生命の色」とされています。そのための朱色でしょう。

神が宿る、大都市京都の異空間

駅を降りて、街中を通って伏見稲荷大社に至り、本殿にお参りすると、山上へ向けて2本の道が続いています。
「千本鳥居」と呼ばれるその参道には、数え切れないほど多くの鳥居が、隙間なく並んでいます。柱には奉納者の氏名や会社名が記されています。人間は効果を感じないものに、大金は投じません。実際に「稲荷神が収益や出世をもたらしてくれた」と考える人々が、とても多いことがうかがわれます。

千本鳥居

▲千本鳥居

日中でも薄暗い、千本鳥居のトンネルを抜けると、奥社奉拝所に出ます。参拝者の多くはここで引き返してしまいますが、伏見稲荷大社参拝の真髄はこの先にあります。
山中にはお塚が無数にあり、それらをめぐることを「お山めぐり」と言います。「お山をする」という言い方もあります。
「お山めぐり」は、標高233mの稲荷山(一ノ峰)を一巡する約4kmのコースです。家族でハイキングを楽しめる距離です。

最初に至るのは、熊鷹社。その先、道は四ツ辻から左右に分かれ、どちらを通ってもかまいませんが、右へまわる人が多いようです。これは右へ進むと、一ノ峰・ニノ峰・三ノ峰と、数字の順番通りにめぐることになるからでしょう。

そして、大杉社、眼力社、御膳谷(ごぜんだに)奉拝所、薬力社を経て、最高地点の一ノ峰上社に行き、道を下りながらニノ峰・三ノ峰をめぐり、四ツ辻にもどります。一般の観光参拝者なら約2時間で歩けます。

「お山めぐり」をしていると、しばしばおダイさんと信者の団体に出会います。神霊と話をし、祈りを捧げる姿からは、日本にはまだまだ自然神への信仰が残っていることがうかがえます。
「神宿る山」であること。それこそが、伏見稲荷大社の魅力でしょう。

【伏見稲荷大社を含む京都観光コースガイド】

三十三間堂から洛南の寺社へ

【公式ホームページ】

伏見稲荷大社

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