野分

(のわき)

風の吹く草原

秋口に吹く強風のことを、野分といいます。平たく言えば台風のことですが、 野分と書くと、はるかに広がる草原を分けるように吹いていく風がイメージされ、風流に感じます。

昔の人は、台風が巨大な雲の渦だと知りませんから、「毎年この時期に、すごい風と雨が来るなあ」くらいに捉えていたのでしょう。

野分といえば、『源氏物語』の章の名前としても知られています。
源氏の息子、夕霧は、野分のあと、「風見舞い」を口実に、さまざまな女性たちを訪れます。
うぶで多感な少年は、紫上のしっとりした大人の女性の魅力にはまったり、父、源氏について歩いて、父が玉鬘と寄り添うのを見たりして、大人の世界にいざなわれていきます。

源氏と夕霧の関係は、『ドラゴンボール』の孫悟空と孫悟飯に似ています。息子には父ほどの魅力はありませんが、長年物語を引っぱってきた父に代わって、 物語に新たな息吹を吹き込み、展開していく役割を果たします。

紫式部の『源氏物語』とともに平安文学の双璧を成す『枕草子』で、 清少納言は「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。立蔀・透垣などの乱れたるに、前栽などもいと心苦しげなり。大きなる木どもも倒れ、 枝など吹き折られたるが、萩・女郎花などの上に、横ろばに伏せる、いと思わずなり」(百八十八段)と書いています。
台風を単なる災害と捉えず、「をかし」と見るのは、快活で才気あふれる 清少納言ならではの観察かもしれません。
どこか子どもの目線に似たものがありますね。

一方、『源氏物語』は大人の目線で書かれています。 「野分」というタイトルで、大人の世界にめざめて揺れる、思春期の夕霧の心のようすを、表現しているわけです。


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