京都栂ノ尾山、高山寺

高山寺に行くのは、長い間のあこがれでした。ここは、明恵上人ゆかりの寺であるからです。
私が明恵上人について知ったのは、河合隼雄の『明恵 夢を生きる』によります。
私は深層心理学の巨人といわれるユングが好きで、その一環として明恵を知りました。

明恵は、19歳のときから没するまでの約40年間、夢の記録を書き続け、『夢の記』という書を残した高僧です。まるで、夢が宇宙への扉のひとつであることを確信していたかのように…。

明恵は幼くして父母を亡くし、9歳のときに高雄山に上りました。その日の夢として、こんな記録をつけています。

死んだ乳母が、体の肉を切り刻まれて散らばっていた。その苦痛は激しいものに見えた。その女は日頃から罪深い者であることを思い合わせて、たいへん悲しく、きっと僧になって、この人たちの後世をも助けるために精進しなければならないと思った。

一見、残酷な景色に思えますが、これは「死と再生」の象徴でしょう。新しい自分に生まれ変わる決意を固めたということです。
その後、明恵は修業を重ねて卓越した僧へと成長して行くわけですが、どうも修業の過程で千里眼を身につけたようです。手洗いの桶に虫が落ちたり、小鳥の巣が蛇に襲われたりするたびに感知して、弟子たちに、「助けに行ってやれ」と命じています。

高山寺は京都駅から遠い高雄の山中にあります。敷地は割合広いですが、寺の建物自体は小さいです。森閑とした林に囲まれ、敷地内にいくつかの建物が点在しています。山寺ですから、京都らしい風情とは、少し違います。京都というよりは、むしろ鎌倉の寺に似た雰囲気があります。
有名な『鳥獣戯画』を蔵する寺であり、京都の世界遺産のひとつでもあるにもかかわらず、訪れる人はそう多くはありません。

私自身、高山寺は京都へ観光に来る人の多くにウケる寺ではないと、思います。それにこのエリアは起伏が激しく、というより、上り坂や階段が半端ではないので、率直に言って、あまりお勧めしません。高山寺はまだしも、近くにある神護寺ときたら、若い人でもかなり大変です。

にもかかわらず、高山寺……「深さ」を感じる寺です。

それにしても、夢とは何でしょう?
なんとなく、人間が死後にとる意識の座と、夢は同じなのではないか、という気がしています。私たちは、毎晩、死後の世界へ還っているわけです。
根拠はありません。そんな気がするだけです。


高山寺の裏参道

バス停からは裏参道の方が近いです。


高山寺裏参道の石垣

参道の石垣です。苔が生えています。


高山寺の石水院の内部

石水院の中です。簡素なつくりです。高山寺は鎌倉時代に建てられたためか、京都というよりは、北鎌倉あたりの寺に来ているような感じがします。


高山寺石水院の中(廊下)

廊下をわたって行きましょう。静かです。


高山寺の『鳥獣戯画』

日本史でおなじみの『鳥獣戯画』、正しくは『鳥獣人物戯画』です。ガラスケースの中に展示してあります。本物は東京国立博物館と京都国立博物館にあり、これは模本ですが、十分に楽しめます。


高山寺の茶園

石水院を出たところに、クチナシの花が咲いて、よい香りを放っていました。


善財童子の像

善財童子の像です。善財童子はインドの裕福な家に生まれましたが、文殊菩薩の導きによって旅に出ました。そして、53人の人々を訪ねて、のちに悟りを開いた、と伝えられています。
ここにあるのは、この童子の像だけ。静かな、静かな、不思議な空間です。夢の世界に通じているのでしょうか。

高山寺の茶畑

日本で最初に開かれた茶畑です。栄西が宋から茶の種を持ち帰り、明恵上人に贈ったのが始まりと伝えられています。 茶というのも、アルコールとちがって、なければないで済むものなのに、なぜか手放せない、不思議な飲み物ですね。


京都観光街めぐり

【高山寺の基本情報】

●正式名称

高山寺(こうさんじ)

●宗派

単立(真言宗系)

●山号

栂尾山(とがのをさん)

●本尊

釈迦如来

●住所

〒616-8295 京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8

●電話

075-861-4204

●見学に要する時間

1時間ほど

●拝観時間

8:30〜17:00
※終了時間の30分前までに入場してください。

●休日

年中無休

●駐車場

乗用車50台
※11月は有料
※栂ノ尾バス停近くにも市営の駐車場があります。
(100台、無料、11月は有料。

●拝観料

大人  600円
大学生 600円
高校生 600円
中学生 600円
小人  300円
6歳以下 無料

●車いすによる拝観

不可(階段、石、木の根が多く、無理)


【高山寺へのアクセス】

●京都駅から
JRバス栂ノ尾・周山方面行きに乗り、「栂ノ尾」下車、徒歩3〜5分で参道入口へ。
●四条河原町から
市バス51系統に乗り、「立命館大学前」で下車して、
JRバス栂ノ尾・周山方面行きに乗りかえ。
(または)
市バス59系統に乗り、「竜安寺前」で下車して、
JRバス栂ノ尾・周山方面行きに乗りかえ。
※他路線バスでも行けたり、他ルートがある場合もあります。


【高山寺観光のワンポイント】

高山寺・西明寺・神護寺の3寺めぐりをするなら、車が便利です。車がなければ、京都バスで行くことになります(市バスではない)。 途中に龍安寺や仁和寺を通るので、行きか帰りに降りてみることをお勧めします。


【高山寺の年間行事】

1月

●1月1日
新年法要

新しい年を迎えたことを祝い、祖先の霊に感謝します。

●1月8日
明恵上人生誕祭

明恵上人の誕生日を祝う法要です。

●1月19日
明恵上人命日忌法要

明恵上人が亡くなった日にちなむ法要です。

2月

●2月15日
釈迦涅槃会(しゃかねはんえ)

釈迦の遺徳に感謝する法要です。釈迦入滅の日に行います。

3月

●彼岸中日
春期彼岸祭

春のお彼岸の法要です。

4月

●4月8日
釈迦生誕祭

釈迦の生誕を祝います。花祭りとも呼ばれます。

5月

●5月中旬
茶摘み

明恵上人が開いた茶畑の新茶を摘んで、祝います。

8月

●8月15日
盂蘭盆会(うらぼんえ)・施餓鬼会(せがきえ)

お盆の法要を行います。迷える霊には食べ物を与えます。

9月

●彼岸中日
秋期彼岸祭

春のお彼岸の法要です。

11月

●11月8日
献茶式

宇治のお茶屋が自家製の新茶を明恵上人の廟前に供え、商売繁盛を願います。

★毎月の祭り

●毎月19日
写経会・明恵上人資料講読・法話

写経や明恵上人の教えについて学びます。事前に電話での申し込みが必要です。

※天候その他の諸事情により中止もしくは変更になることもあります。


【高山寺の歴史】

高山寺は奈良時代末期の774(宝亀5)年、光仁天皇の勅願によって開創され、神願寺都賀尾坊といいました。のち876(貞観18)年、栂尾十無尽院と改称されました。
その後、荒廃し、平安時代には高雄山の神護寺の別院となりましたが、鎌倉時代に明恵上人が寺地を授かって再興しました。 明恵上人は、1206(建永元)年、後鳥羽上皇の院宣によって東大寺の華厳を根本とする寺として、勅額「日出先照高山之寺」を賜り、寺号を高山寺と改称しました。 なお、「日出先照高山之寺」とは「日が出て、まず高い山を照らす」という意味です。
室町時代の末期には、戦火によって堂宇の多くを焼失。鎌倉時代の建物で、現存するものは石水院だけです。
江戸時代に入って、1636(寛永13)年、永弁上人と秀融上人が堂宇の再建にあたり、ある程度、旧観を取り戻しましたが、明治時代の廃仏毀釈によって、再び荒廃。 しかし、1931(昭和6)年、茶祖のひとりである明恵上人七百年御遠忌記念として、全国の茶道家の篤志によって茶室遺香庵が建てられ、その後、文化財や史料類を保全する倉庫を建設するなど、再建が進みました。
1966年、仁和寺が寺領であった双ヶ丘(ならびがおか)を売却したのに抗議して、高山寺は真言宗御室派から離脱し、単立寺院となりました。
1994年には「古都京都の文化財」のひとつとして世界文化遺産に登録されました。


【人物解説】

●明恵上人 1173〜1232

明恵は高倉天皇を守護する武士平重国を父とし、藤原宗重の4女を母として、紀州有田郡吉原に生まれました。 8歳のときに母が病死し、そのすぐあと、父も伊豆で挙兵した源頼朝との戦いで戦死して孤児となり、9歳のときに高雄山の神護寺に入りました。 少年の頃から学才を示し、成長すると東大寺や建仁寺でも学び、華厳・真言・律・禅などの各派の奥義を体得しました。
源頼朝が鎌倉幕府を開いた1192(建久3)年、明恵は『夢記(ゆめのき)』を書き始め、内面を深く掘り下げて行くようになります。1195(建久5)年からは紀州の白上の峰にこもって修行に励み、 1206(建永元)年、明恵は後鳥羽上皇から栂尾の地を賜われて高山寺を開き、学問や坐禅修行を深めていきました。
臨済宗の開祖、栄西と親交があり、栄西が宗から持ち帰った茶の種を受け取って茶畑を開いたことから、今日でも10月第1日曜に行われる宇治茶祭りでは、栄西および千利休とともに茶祖のひとりとして、祀られています。
1221年、承久の乱が起こり、後鳥羽上皇ら3人の上皇が北条氏によって流罪とされました。このとき明恵は、朝廷方の落人や子女を多数かくまっています。
明恵は、1232(貞永元)年、享年60歳で、生涯を閉じました。明恵はまれに見る深い学識を持ち、純粋で清廉な僧であったと伝えられ、今日でも多くの人の尊崇を受けています。

【高山寺はみ出し情報】

山の中ですが、この地域には意外と食事どころはあちこちにあります。弁当は持たなくても、だいたい大丈夫かと思います。


錦水亭

▲栂ノ尾のバス停ちかくの食事どころ


錦水亭の天丼

▲天丼
山の幸が使われていました。1000円以内で、無難においしかったです。


【高山寺を含む京都観光コースガイド】

◎高山寺と三尾の山寺をめぐる


【公式ホームページ】

高山寺


京都観光街めぐり